2006年5月29日

池袋ウエストゲートパークとジミヘン


 石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』をようやく読み終わった。
 
 なぜ今頃? とか、あんなさらっと読める小説をどうして「ようやく」? とかは、説明すれば説明できるけど、些末なことだからやめておこう。

 この小説がきわめて優れたエンターテインメント作品であることも、私がここでくどくど述べ立てなくてもいいだろう。たとえばAmazonのレビューに掲載された読者の方々の絶賛の嵐を見ていただければじゅうぶんだ。自信をもってオススメできる、とても良質なハードボイルド・ミステリーである。

 最近、小説とか映画とかマンガとかに接すると、たいがい「おもしろいなあ」「すごいなあ」と感心しているような気がする。単純に選ぶものに当たりが多いのか、私の価値判断の基準が甘くなったのか、定かじゃないけれど。前者だと思いたいけどね。

 ただ、ひとつだけ、ケチをつけたい。

 作者はたぶん、クラシック音楽のファンなのだろう。私は未読だけれど、ちょっと恥ずかしいタイトルのモーツァルトに関する著書もあるぐらいだ。
 でも、池袋にたむろする若者たちの青春群像を活写するためには、クラシックだけじゃ弱いんだよね。作者はそれもわかっていて、時折ロックのタームも入れている。その使い方もすごくうまくて、かなり感心したんだけどさ。
 でも、ロック・ファンとしては許し難い事実誤認がひとつ。

 ジミ・ヘンドリックスの名曲「エンジェル」はアルバム『エレクトリック・レディ・ランド』には収録されておりません。

 きたねえ手で俺のジミヘンにさわるんじゃねえよ、ろくすっぽ聴いたこともねえくせに!
 ……とか、そこまで言うつもりはございませんが、版を重ねるときは訂正してほしいもんである。ストーリーのテーマにも関わってくる、大事な曲じゃないの。

 とはいえ、私が読んだのは文庫版でもう18刷(!)。
 手遅れだな。
 たぶん、まちがって『エレクトリック・レディ・ランド』を買った馬鹿が何人かいるだろう。まあいいか、名盤だし。

 

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