2007年4月11日
父親を喰った男
キース・リチャーズが父親の遺灰を吸飲したとかで、物議をかもしている。
http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN200704040033.html
キースの父親、バート・リチャーズが死んだのは2002年。キースはこのときに、父親の遺灰をコカインに混ぜて吸ったというのだ。その後、マスコミに「カニバリズムだ」などと批判され、「あれはジョークだ」と発言を撤回している。
でもね、これはあくまでファンの推測にすぎないのだけど、キースはホントに親父を吸ったんじゃないかと思う。
キースは父親と、長く絶縁状態が続いていた。私の記憶が確かならば、関係が修復したのは80年代後半だったと思う。
大した親父だと思うのだ。要は、息子がロック・バンドなどという浮き世離れした職業に就くことが許せず、息子が二十歳そこそこのときに勘当したわけである。その後、ローリング・ストーンズは名実ともにトップ・バンドになっていって、息子は億万長者になった。それでもこの父親は息子を許そうとはしなかったのだ。息子にすり寄っていけば、贅沢な暮らしも簡単に手に入るのに、頑として認めなかったのである。ホンモノのガンコ親父。男だよねえ。
関係修復は、キースが40歳を越えて、立派な中年になってからのことだったし、これも私の記憶が確かならば、キースの方から打診したということだったと思う。でっぷり太ったバート爺さんと、年齢不詳の妖怪となったキース、いっぱしの大人になったロックンロール・チャイルド、マーロン(キースとアニタ・パレンバーグの子)の三世代揃い踏み写真を雑誌で見たのは、それから数年後のことだったと記憶している。
富も名声も、すべてを手に入れたキース・リチャーズにとって、唯一、自分の思い通りにならなかったもの。それが父親だったわけだ。その父親が死んだ後に、遺灰を吸う。カニバリズムというよりは、一種のイニシエーションとして、やりそうなことだと思うのだ。
男とは厄介なもんで、父親と戦い、父親を越えていくことを宿命づけられている。いわゆるエディプス・コンプレックスであるが、これは心情としてとてもよくわかる。私の父親は一介のサラリーマンであるけれど、まだ越えられたとは思っていない。父親を越えることができるのは、父親が死んだときなのかもしれないな、とも思っている。たぶん、キースもそうだったんじゃなかろうか。
それにしても、90年代にキースは「ドラッグからは完全に足を洗った。今は酒と煙草だけだ」と語り、私もすっかりクリーンになったもんだと思っていた。ことの真偽はどうあれ、「親父の遺灰をコカインに混ぜて吸った」という表現が出てくるあたり、まだたまにはやるってことなのね。それとも、コカインは常習性がないからドラッグのうちに入ってないのだろうか。
文字どおり釈迦に説法だけど、ヘロインだけはやめとけよ、と思っている。
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