2008年1月6日

いづれか歌を詠まざりける(1)

 
 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

『万葉集』柿本人麻呂の歌。「あしびきの」は「山」にかかる枕詞、「山鳥の尾のしだり尾の」は「長い」にかかる序詞。要は、三十一文字も使って「長~い夜をひとりで寝るのかよ……」と言ってるだけ。ムダが多いのである。そのムダが情緒を織りなす。イイじゃないの、と思う。

『新古今』になると、これを本歌として、次のような歌が生まれる。後鳥羽上皇の作。

 桜さく遠山鳥のしだり尾のながながし日もあかぬ色かな 

 こちらは「長~い1日」だけど、桜を飽かず眺めている。しかも、「山鳥」に「遠」がついているせいで、桜は近くにあっても、「山」は遠いことがわかる。さすが承久の乱を起こして文武両道に聞こえた帝、堂々としていらっしゃる。桜を1日中眺めているし(常人にはそんなことできません)、都会(京)のど真ん中にいて、山鳥の声なんざ聞こえなくたって気にもしない。技巧もみごとというほかはない。

2008年1月4日

謎の出版社・成瀬書房、続報

 新年あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。

 昨年4月に、こんな記事を書きました。

ドキュメント 謎の出版社「成瀬書房」を追え!

 以降、この謎の出版社について、追及を続けることもなく放置していたんですが、今年に入ってから、親切な方がこの記事にAnonymousでコメントをつけてくださり、成瀬書房の連絡先がわかりました。下記で検索をかけると、出てくるようです。

日本図書コード管理センター
http://www.isbn-center.jp/cgi-bin/isbndb/isbn.cgi

 日本で出版される書籍には、かならずISBNコードというものがついています。私は職業柄、こいつを扱うことも多いのですが、本をつくる側にとっては、無意味な文字の羅列のくせに、間違うとエライことになるという、かなり厄介で面倒くさいシロモノです。
 でも、こういう使い方もあるんですね。

 誰とは存じませんが、書き込みしてくださった方、ありがとうございました。
 おかげさまで、成瀬書房が千葉県船橋市に現存する出版社で(2005年確認)、一応、取次経由書店販売をしている出版社であることが確認できました。
 電話で問い合わせもできるようなので、こんど問い合わせしてみようかと思っています。

 それにしても、なんだってこんなネット上のチベットみたいなブログ・サイトにたどりついたのかしら、と思ったのですが、どうやら上記記事、「成瀬書房」でググるとトップに表示されるようです。成瀬書房がいかにネットと距離をおいているかの証左でもありましょう。