2009年2月8日

追いかける旅人

 それはあるアーティストの追っかけをしている人のWeb Pageであって、ライヴ・レビューが掲載されている。いっとう古いものは1984年、もっとも新しいものは昨年、2008年となっている。
 そのアーティストは昨年末からツアーをやっていて、ついこの間終わったばかりだ。そのツアー・レポートはまだ上がってないが、おそらくは近々、まとめてアップされるのだろう。ツアーを追っかけながらメモをとり、最終的にツアーが終わったところで文章をアップする。それが彼のサイクルのようだ。

 彼は、アーティストがコンサートを行う場所には、どんな場所であろうと出かけて行く。まさに全国津々浦々、である。むろん、仕事を持っているわけだから全部に行ってるわけじゃない。しかし、1週間ぐらい旅行を続け、毎日異なる会場のライヴを楽しむ、という程度のことは普通にやっている。
 ツアーのセットリストなんてもんは、そうそう変わるもんじゃない。だから、同じ曲を毎晩聴くことになるわけだが、だからこそちょっとした事故がイベントになる。PAの調子が悪くてアーティストが不機嫌そうだったとか、MCでご当地の話をしたとか。また、バンドのノリが良かったとか悪かったとかも、当然レビューの対象になっている。

 それをはじめて見たとき、モノ好きな人もいるもんだ、と思ったのである。かれこれ20年以上、そればかりをやっていて、よく飽きないもんだ。労力も時間も必要経費も、ハンパなものじゃないだろう。大いに驚き、そしてあきれた。
 しかし、気がついたら彼が綴った1日1日の文章を、すべて読破してしまっていたのである。

 毎日のように見ている。そのことが、彼のライヴ・レビューを、音楽雑誌に掲載される凡百の印象記などより、ずっと熱のある、読み応えのあるものにしているのだ。なにしろ、臨場感が違う。読んでいるだけで、そのライヴの空気が伝わってくる。そんな文章はそうそうお目にかかれるもんじゃないし、書けるもんでもない。
 
 私は追っかけということをしたことがないし、したいと思ったこともない。でも、追っかけの楽しさというものを、彼の文章に教えてもらった。全国津々浦々、違う空気。セットリストは変わらなくても、アーティストの気分は変わるし、ファンの顔ぶれも変わる。彼自身の心持ちも変わる。毎日が、新しい驚きに満ちているのだ。

 本当に好きなものを、ひたむきに追いかける。それ以上に素晴らしいことはない。そこに全身全霊をかけて没入し、気づいたら20年以上。そんな彼を、とてもうらやましいと思った。

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