2006年11月24日

カウチポテト・デイズ(映画印象記)

 ここのところ、DVDでけっこう映画を見ている。
 せっかく見たのだから、印象ぐらい書きつけておこう。


『天使にラブソングを2』(1993年)
 最初の作品を見ていないにもかかわらず、故あって続編を見ることに。音楽映画の決め手は所詮音楽に尽きるので、その点ではまずまずの作品だった。ティーンエイジのローリン・ヒルがとても可愛かった。年代調べてみたら、フージーズでデビューする前の作品なんだね。

『レイ/Ray』(2004年)
 レイ・チャールズの伝記映画。公開時からいいという話はほうぼうで聞いていて、親切にも絶対に見ろとまで言ってくださる方もいたのだが、結局見られなかった作品。今頃になって見てますよ、はい。
 評判どおりの作品であったとは思うけれど、それほどのめり込めなかったのは、レイ・チャールズの音楽にあまり馴染みがなかったせいかもしれない。ソウル・ミュージックは大好きなのだけど、レイ・チャールズの音楽はあんまり好きになれなかったのである。たぶんそのせいだろう、同じソウル・シンガーの伝記映画でも『ティナ』の方が興奮したなあ。アイク&ティナ・ターナー、大好きです……ってこれは『レイ』の感想でもなんでもないな。
 感心したのは、レイ・チャールズが最初に加入したドサ回りバンドは、「バンド」というよりは見せ物小屋に近いものであったこと。あらゆるシンガーのモノマネを器用にこなす盲人は、バンドの司会者をつとめていた小人と同様、存在そのものが見せ物だったのだ。そのあたりをしっかり描いているのが立派だと思った。日本で同じことをやるのはたぶん、無理だろう。あえて差別表現に踏み込むことで、身体障害者がもつハンディキャップをしっかり描くことに成功している。このシーンを作品の序盤にもってきた監督の英断と、この表現を許可したレイ・チャールズ本人(撮影中は存命だった)の懐の深さに脱帽する。

『アビエイター』(2004年)
 こちらはハワード・ヒューズの伝記映画。ちと尺が長すぎかな、とは思ったけれど、じゅうぶんに楽しめた。ディカプリオは決して好きな役者ではなく、演技に感心したこともあまりなかったんだけど、この作品で認識を改めた。いい役者さんになったなあ。四面楚歌の状況と神経症のために引き籠もりとなり、狂気に陥っていくヒューズの演技には、大いに感動した。演出のよさもむろんあると思うけれど、大根役者じゃ絶対に演じることができない内面表現を、ディカプリオは十二分にこなしていた。
 マーティン・スコセッシは「アメリカ」にどこまでもこだわっている演出家だと思う。彼は反骨の人を描くことが多いけれど、そこにアメリカにたいする愛憎が見え隠れする。


『アルフィー』(2004年)
 これも2004年の映画だけど、『レイ』や『アビエイター』とは異なり、ほとんど話題にならなかった作品。ミック・ジャガーがサウンドトラックを担当していなければ、見なかっただろう。
 ソニー・ロリンズのサントラでも有名な60年代の映画のリメイクで、プレイボーイの悲哀を描いている。主演のジュード・ロウはじつにカッコよかった。
 ミックの手になるサウンドトラックは気に入っていて、オリジナル・ソロ4作目の『ガッデス・イン・ザ・ドアウェイ』よりずっとよく聴いたのだが、果たして映像に合っていたか? と問われると首をかしげざるを得ない。映画のBGMにするには、ミックの声はアクが強すぎるんだよな。一応、映像に合わせて楽曲をつくったらしいんだが。


『子ぎつねヘレン』(2006年)
 目が見えず耳が聞こえないキツネを拾った少年の成長とそれを取り巻く人々を描く。早い話が、お涙頂戴を意図してつくられた映画である。
 お涙頂戴、嫌いではない。動物映画も同様である。だが、これはいただけなかった。たぶん、脚本がよくないんじゃないかと思う。どこで泣かせたいのかがわからない。
 目と耳が不自由なキツネ、というテーマはそれだけでとても可哀想なわけだが、人間とちがってキツネは「見えない」「聞こえない」をアピールできない。それを物語るのが獣医役の大沢たかおのセリフだけというのがいかにも説得力不足。おかげで、キツネがなんで衰弱していくのかも、なんで死ななければならないのかも、今イチよくわからなかった。理由がわからなきゃ泣けないでしょう、さすがに。
 映画を見ながら、「お涙頂戴の動物映画はハズレがないからスポンサーがつきやすい」という話をどこかで読んだことを思い出した。その連想から、『リチャードホール』でアンタッチャブルがやってた『パンダプロデューサー』というコントを思い出してしまい、ますます泣けなかった。
 パンダプロデューサーは「動物出しとけば視聴率かせげるんだから、動物出せばいいのよ!」と言って動物の奇妙な生態についてウンチクたれて、ひとりで笑う鼻つまみ者のプロデューサーだが、ひょっとして、この映画のプロデューサーも同じようなものだったんじゃないか、という気がして仕方がない。


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