2007年6月20日

ワウペダル購入記

 ワウペダルを買った。それまで使用していたものが壊れたので、購入したのである。

 ひょっとすると、ワウペダル、と聞いてもなんのことかわからない人もいるかもしれない。ワウとは、足で踏み込むことによって音の周波数帯を変化させるギター・エフェクタである。形状としては、車のアクセルペダルに似ている。音は、その名のとおりワウ・ワウと鳴る。

 ……と、あれこれ説明するより、音を聞いてもらった方がてっとり早いだろうな。便利な時代になったものです。

Jimi Hendrix - Woodstock '69
http://www.youtube.com/watch?v=3h_L9Ud306I


 ワウ本体は映ってないけれど、この映像の冒頭でジミ・ヘンドリックスが足で踏んでいるのがワウペダルである。

 ジミヘンの時代からあるエフェクタであるから、つくりはきわめて原始的だ。裏ブタを開けることで中をのぞくことができるが、回路はラジオなみ、アナログ・トランジスタの世界であって、ICチップなんぞは使われていない。

 私がワウを使いはじめたのは1年ほど前である。現在はバンド活動をしていない友人に借りたのだ。友人のワウは、「クライベイビー」と呼ばれる、「ジミヘンもクラプトンも使っていた!」という触れ込みの機種であった。
 ワウを踏むと、音が古くなる。ヘタクソなのも(若干ではあるが)ごまかせる。こいつはいいや、と思って、以降ギターを弾く際になくてはならぬものになった。

 そのワウが、ここのところ調子が悪かったのである。踏み込むと、ガサガサ、というきわめて不愉快なノイズがまじる。
 私は1年しか使ってないけれど、友人はその前に10年以上使っている。いいかげん寿命だ、ということなのだろう。

 一応、人から借りたもんであるから、修理に出してみることにした。見積もりをとってみると、全パーツ交換で9千円近くかかるという。現在市場に流通しているクライベイビーは1万円程度であるから、新しいのを買ってもほとんど値段が変わらない。

 そこで、新しいワウを購入することにしたのである。

 ワウの新規購入にあたって、わがバンドのスーパーベーシスト、ボンソワールにオススメの機種を聞いてみた。この男、エフェクタ図鑑を眺めているだけで幸せな気持ちになるという、モノホンのエフェクタ・オタクなのである。彼に勧められたのは、floor PODであった。


 Floor PODはすごいやつだ。何がすごいって、アンプ・エミュレータ機能を搭載していて、ギターアンプがどんなタイプのものでも、「目的のアンプ」に似た音をつくり出すことができる。要は、こいつが一台あるだけで、アンプの機種にかかわらず自分好みの音がつくれるのだ。さらに、ワウ・コーラス・トレモロ・ファズ・フランジャー・ディレイと、エフェクタ類はたいがい、こいつ一台で代用できてしまう。一台で十役も二十役もこなすすごいやつなのである。
 当然、ジミヘンの時代にはこんなもんはなかった。近年の技術革新によって製造されるようになったシロモノだ。上記のワウとはちがい、完全なデジタル機材である。

 私は「お徳用」とか「買うともれなくついてくる」とか「10パーセント増量」とか、大好きな人間であるから、一石二鳥ならぬ一石二十鳥を易々と成し遂げてしまうFloor PODはたいへん魅力であった。さっそく、ギターショップで試奏させてもらった。

 噂にたがわぬすごいやつだった。誇張でなく、なんでもできる。「なんでもできる」ということは操作が複雑になるということだから、実際に「なんでも」させるためにはそれなりにこいつの扱いに熟達しなければならないだろうが、機械はキライじゃない。楽しみながら熟達できるだろうな、と思った。

 だが、結局こいつは買わなかったのである。私が購入したのは、以前使っていたのとまったく同じクライベイビーであった。

 理由は明瞭。クライベイビーの方が、ギター+ワウ+アンプの3点セットのみで使用する際に、「イイ音」を出してくれたからである。Floor PODのワウは、単体で鳴らしたときには気づかないが(要するに、微妙なものなのだが)、弾き比べてみると、明らかに音が痩せていたのだ。

 さらに、車のアクセル同様、終始踏み続けることで効果を出すワウは、「踏み心地」もよくなきゃいけない。Floor PODはボディがプラスチック製、図体のわりに軽量なので、強く踏むと本体がガタガタ揺れる。踏み心地は断然、クライベイビーに軍配があがるし、デジタル機材なのだから、振動は決して機械にいい影響を与えないだろう。
 私はバンド演奏の際つねに酩酊しているきわめて不真面目なプレイヤーなので、酔った勢いで暴力的に踏み込んで「バキッ」とか折れる想像も脳裏をかすめた。こいつは、よろしくない。

 と、いうことで、今回のワウ購入は前とまったく同じ、クライベイビーになったのであった。
 クライベイビーは重い。この季節なんざ、持って歩くだけで汗が噴き出てくる。しかし、この「重さ」には理由があるんだ、とはじめて納得がいった。VOXも試奏してみたんだけど、やっぱクライベイビーの音が好きだったな。
 今度の日曜にわがバンド、ザ・ミラクルズのセッションが予定されているので、この新品クライベイビーをバリバリ踏み倒してやる予定である。踏むどー!

 誤解がないように付け加えておくが、断じてPODがよくないと言っているわけではない。ありゃものすごいオモチャだぜ。ワクワクしちゃう。

 今度、おこづかいをためてペダルなしのPOD(ないしはそれに類するマルチエフェクタ)を買おう、と心に決めた。
 

6 件のコメント:

takebow さんのコメント...

Floor PODって格好いいですね。昔のペダルと比べると、圧倒的ですね。音もスゴそう。

1TRA さんのコメント...

takebow師匠、いつも書き込みありがとうございます。
これは推測ですが、CDの音質がアナログ・レコードに永遠にかなわないのと同様、デジタル・エフェクタもアナログ・エフェクタにはかなわないのでは、と思いました。
ただ、アナログは音を揺らしたり、歪ませたりするために、それ用の回線を並べねばならないわけですが、デジタルはそいつを一元化するのも簡単なのです。
デジタル音源の普及はiPODはじめユーザの自由性の高いメディアを生み出し、利便性は圧倒的に高まったわけですが、反面、「音の豊饒さ」を失っているのだと思います。

匿名 さんのコメント...

 すすめておきながらアレですが、ギターがすでにいい音なので、それにふさわしいもの=アナログでシンプルなエフェクター、という判断は正しかったのではないでしょうか。

 ショボいギターだと、Podの効果は絶大なんでしょうね。質の悪い食材だと、調味料が多めになるのと一緒で。

1TRA さんのコメント...

ボン亭殿、コメントサンクスです。
ことワウに関しては、やっぱ踏み倒すもんなので、ごっつい方がええと思いました。この季節に持って歩くのは苦痛ですけど。
でも、あれこれついてお徳用なPODはやはり魅力だよ。今度(ペダルなしで)評判のええやつを教えてください。

匿名 さんのコメント...

notギタリストの立場から勝手な感想を述べさせていただくと、「クライベイビー」っていう名前がとってもイカす!!!
ボン亭さんのおnewベースのこともあるし、今度のスタジオ入りが楽しみです。むふふ。
え? 私? 万年練習不足ですけどなにか?
(スミマセン…)

1TRA さんのコメント...

そうなのよ! わかってるねえケズルちゃん。
クライベイビーは名前がカッコいいんだよ!
そして万年練習不足は俺もそうだから大丈夫さ!
(って、ホントに大丈夫なのか?)

日曜日、楽しみにしてまっせ!