2007年4月13日

おまえの顔に反吐が出る

 創価学会には、あまりいい思い出がない。

 いや、どっかに監禁されて、大勢の学会員に入会を迫られた(これを折伏という)とか、そういう経験があるわけじゃない。むろん、勧誘されたことがないわけじゃないが、きわめて穏やかな勧誘で、すくなくとも自由を奪われるような経験はしていないのである。

 もう時効だと思うから言うけれど、私は以前、創価学会のきわめて熱心な信者の女の子と、交際していたのである。学生の頃の話だ。

 つきあいはじめた頃は、彼女が学会員だということは知らなかった。知っていたらつきあわなかったか、と問われれば、「知っててもつきあっていた」と答えるしかない。なにしろ、私の方が惚れ込んではじまった交際だったから。

 その彼女との交際がはじまって、間もないころの話である。
 今もそうだけれど、学生の頃の私は、かなり躁鬱のハッキリしてる方だった。ちょっとしたことでふさぎ込んだり、つまんないことで悩んだりすることも多かった。その様子を見た彼女が、ポツリとこう言ったのだ。
「私が1TRAくんを変えてあげるから」
 人が人を変化させる。そんなことは日常、ありふれていることかもしれない。だが、当時の私はそんなふうには思っていなかった。だいいち、「変えてあげる」といわれてハイそうですかお願いしますというほど、素直な性格でもないのである。
 だが、その言葉は妙に印象に残った。誰かに面と向かって「あなたを変えてあげます」と言われるなんて、そうそうできる経験でもないだろう。すくなくとも私は、このとき以外経験したことがない。たぶん、今後もないんじゃないかと思う。

 彼女が言う「変えてあげる」が、「私を創価学会に入会させる」ということだと知ったのは、それからしばらく経ってからだったと思う。ああそういうことかと納得した。
 以降、彼女と口論することが増えた。男女の痴情のもつれによる喧嘩ではない。これは断言できるけれど、彼女と私は、そうした低レベルなぶつかり合いは一切、なかった。だが、しょっちゅう言い争っていた。議題は、宗教論争である。熱烈な信仰者と、かたくなな無神論者のシビアな論争だ。
 ハッキリいって、不毛な議論だった。どこまでいっても平行線、どちらかが折れて妥協点を見出すということがあり得ないのだから。たぶん、彼女の方では私がいつか折れてくれるだろうと期待していたのだろうが、私は絶対に折れることはなかったし、折れるつもりもなかった。

 考えてみれば、おかしなカップルであった。会うたびに宗教論争を戦わせるカップルなんか、世の中にそうそうあるもんじゃないだろう。
 会うたびにガチンコの議論をすることになるわけだから、会うとむちゃくちゃ消耗した。ぜんぜん楽しくなかったし、ものすごく苦しかった。だったらサッサと別れればいいじゃないか、と思うかもしれないが、そこは男女関係である。理詰めでは動かない。別れようとは何度も思ったが別れなかったのは、やはり、彼女が好きだったからだ。腹立たしいことも多かったし、自分がみじめに思えることもしょっちゅうあったが、それでも、私は彼女と一緒にいたかったのだ。たぶん、彼女もそうだったんじゃなかろうか。

 とはいえ、はなっから終わりの見えている交際である。1年以上そんな状態が続いた後、私は失恋することになった。
 男女というものは、お互い好き合っていても別れなければならない局面がある。知識としては当然、知っていたことであったけれど、実体験でそれを経験するとは思ってもみなかった。

 彼女はそれからしばらくして、会社の先輩と交際しはじめ、やがて結婚した。相手の男性は学会員ではなかったが、学会員となることで彼女を受け入れたのである。

 創価学会、もしくは池田大作の名前を聞くと、彼女のことを思い出す。苦しくて悲しい青春の1ページである。

 なんでこんなことを長々と書いたかというと、次のニュースを目にしたからだ。

温家宝首相が創価学会の池田大作名誉会長と会談
http://www.asahi.com/politics/update/0412/TKY200704120252.html

 この記事の中に、ふたりの会談の様子を描写したくだりがある。引用しよう。

 池田氏は「閣下、光栄です。うれしいです。政治家でなくて庶民の王者と会ってくださって」と話しながら首相と握手。首相の国会演説を「不滅の名演説だった」とたたえた上で、「氷を溶かす旅は大成功」と評価した。
 
 庶民の王者!
 俺は目下のところまちがいなく庶民のひとりだと思うけど、てめえを王様と思ったことなんざ一度もねえよ。だいいち、「不滅の名演説」たあ何だ。日本人らしさのかけらもない、見え透いたお世辞じゃねえか。てめえのそういうところが気にいらねえから、俺は彼女の熱心な勧誘にもかかわらず、入信する気にはなれなかったんだ。

 マジメな話、これは政治的にも危険な兆候である。池田大作は温家宝を通して自民党にまたも大きな貸しをつくった。温家宝は明らかに、自民党政権が公明党なしで成り立たない(公明党の選挙協力がなかったら、落選する議員が山ほどいる)ことを知っていて、公明党を通じて日本政府をコントロールしようとしている。いいのかよ、それで?

 さきの彼女は、池田大作の公演を聞いて、涙が止まらなかったそうだ。
「なんで涙が出てくるかわからないんだけど、涙がぼろぼろ出てくるの」
 信者はそれでもいいだろうさ。でも俺はそんなの、嫌だ。今だって、絶対に嫌だ。あの腹黒さを全面に出した面がまえを見るだけで、(個人的怨念も相当あって)反吐が出る。

 最後にトリヴィアをひとつ。
 世界でいちばん勲章をたくさんもらった人を知ってるかい? 池田大作なんだぜ。やつは、勲章を200個持ってるんだ。勲章のコレクターなのさ。くだらねえ野郎だと思うだろ?

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

切ない話ですねぇ。1TRAさんもその女性を「変え」ようとしていたのかも知れませんね。

創価学会の牙城である足立なんかに住んでいると、悪口言うだけでハブにされます。それでも小生は言い続けます。「庶民の王者」とは「リンダ、こまっちゃう」ですね。もっとも田原聡一郎に言わせると、今回の温家宝来日の目的は首相に会うためより、池田大作に会うためだそうですから「王者」という我が世の春を満喫したことでしょう。「間違いないっ」。あれだけあっちこっちの大学などに寄付しまくって、勲章やら名誉学位やらもらって喜んでいるご本人が「富士短期大学卒」って、ぷぷぷっ。これはヤバイ。「ちくび~ム」くらいそう。本気で許せないのは、自分が勲章もらえないからって、元公明党委員長の竹入氏などを口汚く罵る、その心です。自民との連立も、自分が国会の証人喚問されるのを逃れるためというのが、情けない。。。

テリー伊藤じゃないけど、「出てこい、池田大作」です。

1TRA さんのコメント...

takebow師匠、赤裸々告白に書き込みありがとうございます(笑)。
池田大作って富士短大なんですか。知らなかった。学会のことを書くのは、mixiのようにお友達のいるフィールドでやると誰が学会員かわからず無用のトラブルを招きそうで怖いっス。なかなか悪口のいいづらい組織ですよね、創価学会って。妙に右傾化しはじめている最近の自民党のストッパーになっているのは加藤・山崎らハト派議員ではなく公明党ではないかと思っているので、個人的怨念をのぞけば悪口ばっかでもないんですが。ただ、政権の中枢にイチ宗教団体の政党(こういうと公明党は物凄く怒ります)がいるのはキモチ悪い。池田大作に死ねといわれれば迷わず死ぬやつらですから(笑)、そういうのは野党にいるのが健全だという気がします。ちなみに、公明党党首の太田さんは取材で会ったことがあります。個人的怨念をのぞけば、悪い印象は抱きませんでしたが、足立区選出ですよね、たしか。

匿名 さんのコメント...

お言葉を返すようで申し訳ないのですが、公明党=自民党のストッパーという説には同意しかねます。そんなに深くは考えていない証拠が、今度の「国民投票法案」の件でも分かると思います。
それとご存じないとは思いますが、足立の比例代表で第一党は公明です。太田だけでなく、今は目の敵の竹入氏も足立から出てました。住んでいなくても絶対に落ちないので、委員長がここから出ることが多いのです。元委員長の石田氏の実兄、石田次男氏こそ学会を継ぐべき人物だったのに。。。追い落としの技術はまさにヒトラーなみですね。

1TRA さんのコメント...

なるほど、国民投票法案はどうでもいい感じでしたね。憲法改正もこのまま突っ走るのでしょうか。自称・平和の党が笑わせますね。
wikipediaによれば、田中角栄は池田を「法華の太鼓を敲くヒットラー」と評したとか。
しかし、足立区がそれほどまでに学会員の牙城になっているとは知りませんでした。ちなみに、私が交際していた学会員女性は新宿区民でした。お父さんは聖教新聞社の社員。生まれながらの学会員でした。

匿名 さんのコメント...

田中角栄はそう言いながら、出版妨害事件の時に助け船を出したことでも知られてますね。
そういえば、例の野中広務を扱った本で、公明が新進党を辞めた理由というのが載ってました。静穏保持法というのがあって、政党本部の周りで街宣活動できないらしいのですが、公明が独立政党でないと信濃町でガンガンできたらしいんです。それで池田大作邸もうるさくてしょうがないので離脱したということでした。どこまでも自己中な名誉会長でありました。

1TRA さんのコメント...

なんと、新進党の解散の裏にそんないきさつがあったとは!名誉会長、まさに私利私欲のために政界を引っかき回してますね。どこが政教分離なんだか(笑)。
師匠のコメントはいつも勉強になります。ありがとうございます。